8月27日、朝7時。
さるふつ公園キャンプ場での朝を迎えた。
昨日までテントに吹き付けていた風はだいぶ弱まっており、普通のキャンプ場となんら変わらないくらいの風になっているようだ。
これなら撤収はラクだな。
テントの中で寝袋やらマットを丸め、テントのジッパーを開け外に出た。
どんよりした空。昨日夕陽を見た空はどこかへ行ってしまった。予報どおり、天気は確実に悪い方へ向かっているようだ。
それでも雨が降ってないだけいい。パラッと来る前にテントを片付けなければ。
俺たちが片づけをしてる間に、どんどん同じキャンプ場にいた人たちが先に去っていく。ほとんどがチャリダーのようだ。
9時前に俺と上原が撤収を終えた頃、キャンプ場には誰もいなくなっていました。ひろーいキャンプ場にポツンと2台のバイク。
荷物をバイクに積んでる途中で、いよいよ雨がポツポツと降り出してきたので、今日は出だしからカッパ着用を余儀なくされた。
今日の目的地は知床半島。
知床半島に行くということ以外、何も決めていなかった。今夜はキャンプをするのか、ライダーハウスに泊まるのか、それともどっかの宿に泊まるのか、何も考えていなかった。ただ、ひたすら知床へ向かって突き進むという目標のもと、小雨降る中を走り出した。
網走まで250km
そう表示されているR238を南下し始める。
走り始めてすぐ、国道をはずれ、エヌサカ線という牧草地をつらぬく道へシフト。しかし雨天の中では、心地よいハズのストレート道もなんかイマイチ盛り上がらない。ほどなくして再びR238へ入り、なんとも退屈な国道走行に耐える。
「しかたないさ、今日は移動日なんだ」
そう割り切れば、雨でもいいか・・・というプラス思考も働いてきたりする。
しかし次第に強くなる雨。その中を走り続けているうちに、今日一日が「過酷な移動日」になることが明白になってきてしまったのである。
さるふつ高原を出発して2時間後。
紋別まであと50kmほどの雄武町
【map】という街の道の駅でトイレ休憩。
トイレをすませると、アメリカンのリアシートにキャンプ道具を満載にしてる男性を発見。話を聞くと、地元がものすごく近い人だったので一瞬で意気投合(笑)
同じく知床に向かっているそうな。でも今日はこんな天気なのでキャンプはしないとのこと。お互いこの先も安全運転で!と、挨拶を交わし、彼は先に知床方向へ走っていった。
俺と上原も再びR238を走り始めた。
しかしこの辺はなーんも見るところないし、本当に走ってて退屈だった。
そしておなかもすいた12時前、紋別市内に入った。
道の駅「オホーツク紋別」にて昼食もかねて休憩をとることに。
ここへ来る20分くらい前から、もうすっかり本格的な雨に。カッパはビチョビチョ。こんな格好でそのまま道の駅で飲食できないので、入口で全部濡れたものをぬいで、そのまま入口に放置!
いよいよ一般の人に「かわいそうな目で見られる時期」に突入してきてしまった。
昼食をとりながら、窓の外を無言で眺める俺と上原。
雨は全くやみそうにない。今日一日降り続くと見える。
昼食をとり終わって、この道の駅の近くに、巨大なカニのハサミのモニュメントがあることを知る。とりあえずそれを見に行くことに。
道の駅の入口に放置したビチャビチャのカッパを再び着込み、内装がだいぶ湿ってきたヘルメットをかぶる。この濡れたヘルメットをかぶった瞬間の不快感と言ったら・・・。
そしてこれが例のカニのハサミのモニュメント。
俺 「デカイな」
上原 「デカイわ」
言葉が少なげな二人であった。
さて、モニュメントを見て、再び知床を目指して走り出す。
悪天候で視界が悪く走行に気を使うため、思ったより疲れる。
知床まで日が暮れる前にたどりつけるだろうか。
道路のワダチには水がだいぶたまって、それを前の車がはねあげるもんだから、ずーっと水しぶき+雨を食らい続けながら走った。
ヘルメットのシールドに
電動ワイパーをつけてほしいくらい視界不良。
加えて、対向車にトラックとかダンプが来たときは「修行の時」である。
かなりの水圧で道の泥水が跳ね上げられ、全身に『高水圧泥水シャワー』を浴びせかけられる。これを回避するために道の左端へ寄るのだが、ワダチにたまった水たまりがけっこうな深さになっており、そこにハマると水の抵抗でバイクが一瞬減速するのでビビる。
一度、ヘルメットの内側の曇りをなくすため、シールドをちょこっとあけた瞬間に、この高水圧泥水シャワーを食らったせいで、顔面ビッチャビチャ。おかげでヘルメットの内装もフルウェット状態に。最悪なコンディションでサロマ湖を左手に走った。
そのサロマ湖の道の駅にて。
ビチャビチャのヘルメットをぬぎたくない(というか、またかぶりなおしたくない)ので、メットかぶったまんまトイレへ。
上原 「サロマ湖がなんだよ!」
彼も雨でだいぶイラついているようだった。
この頃になると、クルマから半袖短パンで降りてくる若人が恨めしく思えてくる。
「うわ、けっこう降ってんな~!」と身をすぼめながら道の駅へ入っていく彼らは、もちろん俺らみたいにビチャビチャではない。まったく、なんて贅沢なやつらだ!
・・・おっと、長時間雨に降られて、すっかり変態になってしまったようだ。
気を取り直して走り出す俺と上原。
時刻は2時。知床まであと100kmほど。なんとか日が暮れる前には知床に着けそうだ。天気予報を見ると今夜も天気は回復しない予報なので、キャンプはせず、とりあえず知床周辺で旅館かライダーハウスへ泊まる考えを固めた。
その後も雨はやまないものの、順調に網走市内を抜けて斜里町まで走ると、もう知床はすぐそこである。この斜里町で「海まで続くような直線道」へ行きたかったのだが、こんな悪天候で行っても感動は薄そうなので、今回はカット!
そうしてさるふつ公園キャンプ場から走ること350km、無事知床に到着。
時刻は4時半。そろそろ本当に本日の宿泊地を決めなければならない。
ライダーハウスは知床峠を越えた羅臼側にしかないようだ。これから峠越えをする気にもなれなかったので、現在いるウトロ側でなんとか宿を探そうとR334をウロウロ。
しばらくウロウロすると、民営の国民宿舎を発見。早速バイクを降り、本日空きがあるかどうかを尋ねる。
すると、幸いにもあと1部屋だけあいているというので、今日はこの桂田さんに泊めていただくことにした。
濡れているものがけっこうあることを伝えると、「ボイラー室があるから、そこに入れとけば乾くよ」と、実にうれしいお言葉。
荷物をバイクから降ろし、部屋に通されると早速浴衣に着替えてリラックスの俺と上原。
キャンプ生活に慣れた体だと、『屋根がある』『テレビがある』『ふとんで寝れる』というのはかなり豪華な3点セットである。しかも洗濯もできるので、ここでまた下着類を洗う。
夕食は6時からだそうなので、その前に露天風呂つきの温泉に入り、今日一日雨で冷えた体をあたためる。
そして夕食。想像していたよりはるかに豪華で驚いてしまった。
これにサケ・タマゴ・そぼろの3色丼がついて、さらにデザートにはメロンまで出て、かなり満足でおなかいっぱいに。
満腹になり、部屋に戻るとフトンが敷かれていた。
早速そのフトンに横たわる幸せ。
テレビで天気予報を見ると、明日もあさってもしあさっても、北海道は雨。
なんか前線の影響を受けて、全国的に大雨で凄いことになってるし・・・。
俺と上原、クソみたいな天気に舌打ち+タメ息。
「今回の旅、これにて終了だな」
あと3日あるというのに、すでにこの先に期待を持たない2人。
明日朝起きて、本当に天気が悪かったら無理にバイクで移動するのはやめて、知床観光船にでも乗ろうという案があがった。
宿のおじさんに観光船について尋ねると、値段はそこそこするけど、今の時期は野生のクマやシカがいっぱい見れるし、おもしろいですよ!
とのことだったので、明日の朝起きて、天気がよかったら根室方面へ。雨が降ってたら知床観光船で遊ぼうというプランを立てた。
北海道ツーリング後半。
完全に天気に見放されたけど、まだ北海道にいる限り、きっと何かいいことがあると信じて、5日目の夜は雨の降る中更けていった。
続く...
【本日の天候】
雨
【本日の走行距離】
353km
【本日の走行ルート】