前編に引き続き、記憶が鮮明なうちに一気に書き上げました。
今回もまたツーレポ並みの長文となっておりますので、心してお読みくだされ(笑)
入院3日目の朝を迎える、第四章の始まりです。
第四章 食事との戦い
3月5日。
入院3日目の朝、そして手術後初めての朝を迎えた。
ゆうべは、夜中に少し痛みが出てきたので、鎮痛剤を服用。本当は食後じゃなきゃ飲めないくらい強い薬なんだけど、5時間あけてたっぷりの水で飲めば、疼痛時に飲んでいいとのことだ。
朝の検温、血圧測定に加え、今日は採血も行われた。
体温は薬のお陰で平熱。
そういえば、肝心の顔の腫れだが、いったいどうなってるんだろうか。今は包帯グルグル巻きでよくわからないのだが、かなりほっぺがつっぱっている気がするので、腫れているのだろう。
あ、そうそう。
そういえば俺の向かいにいた問題のおじいちゃんだが、どうやら同室者に迷惑がかかるということで、俺の手術中に別の病棟に移されたそうで。いや~よかったわ。これで静かに眠れる。
朝起きて、とりあえず用を足そうと、点滴をガラガラ引きながらトイレへ向かう。
トイレで会ったおじいちゃんが、俺の顔を見て一言。
「交通事故でもやったのかね?」
まぁ、無理もないよなぁ。
まさか歯を抜いてこんな状態になるなんて思わないだろうし。
11時ごろ、歯科に呼ばれて看護師さんと共に1階へ降りる。
当然、1階には外来の患者さんがいっぱいいるわけで、手術着をまとった顔面包帯グルグル巻きの俺は、その中を点滴引きながら歩くのだから、みんな俺を痛々しい目で見てくる。
どうだ、俺は手術したんだぞ!
という気分でその中を歩いてやった。
歯科で先生の診察を受け、傷口を消毒してもらう。
そこで昨日の手術の話を聞いた。親知らずを抜く際にアゴの骨を削るのだが、その削る作業を行うとき、キレイに四角く切り取って、歯を摘出し、歯以外の部分は再び元に戻して接着してくれたそうです。
これで術後の経過がだいぶ違うんじゃないだろうか。
いや~いい先生にやってもらえてよかった。
それと、昨日抜いた忌々しき親知らずを見せてもらった。
左の歯が4分割、右の歯が6分割されてプラケースに入っていた。この写真は、きれいに洗浄して水分を完全に無くしてから撮影したものだが、最初見せてもらったときはまだ血にまみれており、歯肉のようなヒラヒラしたものもついていた。
それにしても、俺が手術中寝ている間に、このように歯を砕く作業が行われていたわけだから、それを考えると全身麻酔でよかった・・・。知らぬが仏である。
左の歯は嚢胞のすぐそばにあったせいか、少し腐りかけていた。やっぱり早いうちに抜歯していてよかったわぁ・・・。
この歯は一生の宝物だな。
消毒と診察が終わり、頭からアゴにかけてグルグル巻きにしていた包帯がとかれた。そして、今日の昼から食事が出ることを先生に告げられる。
まじか~、まだとてもじゃないけど食事できる状態じゃないんだよなぁ~・・・。
でも、柔らかいものが出るってことなので、頑張って食べてみよう!
診察室を出て、部屋に戻る途中のエレベーター。
そのエレベーターの鏡の中にいる自分を見て仰天した。まるで自分が自分じゃないくらい、顔がパンパンに腫れているのだ。
大袈裟ではなく、本当にこれくらい顔が腫れていた。両方均等にパンパンになっているので、腫れているというか、一気に太った印象すら受けてしまう。
俺が太ったらこういう顔になるんだろうなぁ・・・。気をつけなきゃ・・・・。
部屋に戻ると看護師さんが点滴をはずしてくれた。これでようやく、点滴と行動をともにしなくてすむ。
あとは朝晩2回、抗生物質の点滴があるだけで、栄養は食事で取ってくださいとのこと。
そして正午を過ぎ、食事が運ばれてきていた。
さすがに今日は2日前のような常食ではないだろうと思い、プレートを見ると「全粥」との表示がされていた。
うんうん、そりゃぁそうだよな。だって今の俺の咀嚼能力はゼロだからね(笑)
おかずも細かくされてるんだろうと思い、フタを開けると・・・。
・・・。
ちょっとおかずが普通すぎやしませんか?
豆腐はなんとか食べれそうだけど、魚とホウレンソウは・・・(泣)
とりあえずお粥と味噌汁を食べる。両方抜歯しているので、今の俺に噛むことはほぼ不可能。舌と上あごで微妙にすり潰してから飲み込む。少しずつ、少しずつ。
なんとはお粥はクリア。
次に豆腐にチャレンジ!
しかしこの豆腐、豆腐の中でも比較的硬いクラスの焼豆腐である。
とりあえずハシで細かく千切って口へ投入。
うぅ、舌ですり潰すにはちょっと大変だ。
焼き目がけっこう手強い。
ダメだ。一口食べて断念。
ホウレンソウは絶対無理なのでパス。
魚は粕漬けで実においしそう。
しかし、噛めない・・・orz
というか、噛む以前に、頬の腫れによって、口の中のお肉がせり出していて、上の歯と下の歯をくっつけることすらできない。前歯を使おうにも、先に口の中の肉を噛んでしまう。
だめだ・・・完敗だ。
とりあえずお粥と味噌汁とヨーグルトだけ食べて終了。
おなかすいてるのに食べれないこのもどかしさ。
キツイっす。
でも、このメニューが出るってことは、食べれて普通ってことなの?
いやー俺には絶対無理だわ・・・。
朝食を40分くらいかけ、その後は歯磨きタイム。
術後初めての歯磨きに恐怖を感じるが、口内を清潔に保たないといけないので勇気を振り絞ってハブラシを持って鏡の前に立つ。
ブラッシング前に口を軽くゆすぐ。
案外痛くない。
そしてさしさわりのない前歯から磨き、その後鏡を見ながら慎重に、慎重に各部を磨く。
口の中が腫れているので、どのみち奥までは磨けないけど、なんとか歯磨き終了。ペッと吐き出すと、歯磨き剤が真っ赤にそまっていた。そしてハブラシも真っ赤に・・・。
あぁ、どおりでずっと口の中が血なまぐさいわけだわ・・・。
傷口は縫合されてるとはいえ、まだまだ血はにじんでくる。でも、これが正常なのだ。
歯磨きを終え、消毒用のうがい薬でブクブクした後は、ベッドでしばし安静にする。
あー、それにしてもヒマだ。
ベッドに寝て見るこの天井の風景、かなり見飽きてしまった。
ま、ヒマと感じられるほど術後に余裕があってよかったけど・・・。
夕方頃、会社の友人がマンガとゼリー飲料を携えてお見舞いに来てくれた。
寝てばっかりの超ヒマな俺に、マンガは救世主的存在であった。やっぱり友達はいいわ。特にこういうときは身にしみて友の大切さを感じる。
友人が帰り、5時半前くらいに夕食が運ばれてきた。
あぁ・・・、また恐怖の食事タイムだ・・・。
今度はどんな強敵が俺を待っているのか。
恐る恐る食器のフタをあけた。
こ、これはッ!!
松風焼きにニンジン、そしてまたしてもホウレンソウ!!
デザートはパイン!
く、食えねぇ・・・orz
どれも咀嚼を要するものばかり。
なんてこった。
とりあえずまともに食べれるのはお粥と味噌汁だけ。
松風焼きとニンジンはハシで潰してお粥にまぜて食べてみたけど、そのすり潰したものすら噛むことがほとんどできず、丸のみ状態で全然食べてる気がしない。
結局お粥と味噌汁だけ食べて、力尽きる俺。
あ~・・・、腹減ったよ。
まだ点滴やってる方が栄養とれるんじゃねぇか・・・?
食事後は抗生物質の点滴。
40分くらいで終わるので、その間はベッド上で動かずじっと待つ。
朝晩行われるこの点滴は、そのたびに針を抜き差しするので、点滴のたびにチクチク痛い。俺は血管が出やすい体質なのでまだよかったが、隣のMさんは出にくいらしく、大変そうだった。
そんなこんなで、入院3日目は終了。
明日はもうちょい食べれるようになりたいなぁ・・・と、願いを込めて眠りに着いた。
第五章 キザミ食
3月6日、入院4日目である。
ここ最近、というか手術後に毎晩寝汗をかくようになった。
もともと寝汗はかくほうなのだが、その量がハンパない。夜中にTシャツがビシャビシャになるくらい汗をかくのだ。だから着替えは常に用意しておかなければならない。
なんでだろうか、体が治癒しようとがんばっているのだろうか。
7時を過ぎ、今日も朝食が運ばれてくる。
どうせ食べれないよ。今日もまだ噛める気がしないし・・・。
お粥に焼き鮭、白菜の漬物。
そして・・・・納豆とノリ。
納豆・・・・か。
いや、しかし鮭はお粥との相性もよさそうだ。
ここはがんばってみる価値がある。
ハシで小さく鮭フレークみたいにしてお粥に混ぜて食べると、これはけっこうイケる。味気ないお粥に花が咲いたようだ。結局、鮭はほとんど食べきることができた。おかずを一品食べれた。これは大きな進歩だ。
食事後は歯磨き、そして点滴。
もうこれが生活のリズムと化していた。
今日は術後、初めてヒゲを剃った。
普段の生活では、毎日剃らなければいけないくらいヒゲの濃い俺。
アゴが腫れているので電気シェーバーをあてるのが怖かったのだが、軽く当てればさほど痛みはなくそれなりに剃れた。でも、頬の皮膚が腫れてのびているせいか、いつもより剃る面積が多い気がしてしまった(笑)
そして今日も午前中に歯科の診察。
開かない口をがんばって開け、傷口を消毒してもらう。
傷口は化膿もなく、キレイだというので安心した。
「食事は食べれてますか?」
と、先生に聞かれたが、おかずはほぼ全滅状態なので、お粥だけ食べれてますと答える。
「おかずは細かくなっていても食べれないですか?」
と聞かれたが、細かくなっていないのでなんとも言えず、「細かければ食べれると思います」と伝えると、先生は首をかしげた。
後で知ったのだが、先生は病院に対し「キザミ食」と呼ばれる、ほとんど噛まずに食べれる食事をオーダーしていたのだが、病院の手違いで、俺のところには通常のおかずが来ていたらしい。
おいおい頼むよ~、そりゃ食べれないわけだよ・・・。
そんなわけで、今日の昼食からキザミ食にしてもらうことにした。
これでやっと栄養がとれるよ(笑)
最後に、先生にいつ退院するか聞かれ、早ければ明日退院してもいいと言われたが、まだロクに食事できないこともあるので、一日延ばしてあさって退院させてもらうことになった。
診察を終え病室に戻るとき、隣のMさんも同時に診察を終えたようだったので、一緒に話しながら病室に戻った。
Mさんも術後順調なようだったが、俺と決定的に違う点は普通に食事が取れているということだった。Mさんは前歯の手術、俺は両奥歯の手術だから、そりゃぁ差がつくわけだ。
その後、期待のお昼が運ばれてきた。
さて、キザミ食とはいかなるものなのか?
おぉ!これはアツイ!
全部噛む必要のない食べ物ばかりだ!!
フタをあけてみると、固形物は一切見当たらなかった。
「ヨシヨシ」と独り言を言い、スプーンを手に取る。
おかずはすべて片栗粉でトロみがつけられていて、とても食べやすい。
中央のお皿に入っているものは、よくサトイモの煮物にかかっているトロみのあるタレのような味がした。左下のお皿に入っているものはよくわからなかったが、とりあえず野菜を刻んで片栗粉で固めてあるようだ。
ま、おいしいとは言えないしおなかも満たされないけど、完食できた!
これで充分だ。いや~よかった。今後食生活は安泰だな。
とはいえ、昨日より少し咀嚼できるようになった気がする。
腫れも手術直後に比べればだいぶおさまってきた。
まぁ、依然としてパンパンだけど。
痛みもだいぶ落ち着いてきて、鎮痛剤を飲む回数も一日一回に減った。
順調に回復してきているようだ。
退院があさってとわかり、なんかソワソワしてきてしまった。
まさかそんな早く退院できると思ってなかったので・・・。
この日の夕食。
もう完食できるようになったし、食事が楽しみになった。
ま、内容的にも味的も、ほとんど昼と変わらないものだった。シロップ漬けのミカンまでミキサーされていたのは驚いた。
今回も完食!
食事中の俺。
食事後は歯磨き、点滴といつものコース。
それにしても、そろそろシャワーのひとつくらい浴びたい。
術後から一度も体を洗ってないので、そろそろ気持ち悪くなってきた。痛みも落ち着いてきてるし、明日あたり先生に聞いてみるか。
第六章 そして退院へ
3月7日、入院生活5日目の朝を迎えた。
術後から丸3日が経過しようとしている今日。顔の腫れは当初よりだいぶひいた。俺の元の顔を知らない人なら、言わなければバレないくらい腫れはひいてきている。
でも、元の輪郭を知っている人が見れば、まだまだ腫れている段階。
一ヶ月前、嚢胞近くの歯肉を検査でえぐった時は、4日ほどでかなり腫れはひいて食事もとれるようになったのだが、さすがに今回はそういうわけにはいかないようで、完治まであと数週間かかりそうだ。
例によって朝ごはん。
カツオブシをすり潰したような半固形の食べ物と、モズクのような味の液体で、あまりおいしくなかった。
でも、今日はフリカケ付きだったので、お粥をおいしくいただくことができ、満足満足。
今日の診察で、先生からシャワーを浴びていい許可が降りた。
なので昼食を食べた後、ルンルンでシャワーに向かい、4日ぶりに頭を洗って、体を洗う。おそろしくサッパリした。
その後気分が爽やかになったところで、日の差し込む談話室で、友人が持ってきてくれたゴルゴ13を読み時間を過ごした。このゴルゴ13、ひとつの吹き出しにありえないくらいセリフが詰め込まれていて、マンガを読んでいるというか、小説を読んでいる気分になる。
友人が「一冊2時間はかかるよ」と言っていたのはウソじゃなかった(笑)
そんなゴルゴと時間を共にし、日もだいぶ傾いてきた夕方。
今日は会社の人たちが仕事帰りに、数人でお見舞いに来てくれた。
俺自身、だいぶ落ち着いてきたと思う顔の腫れも、やはり普段の俺の顔を知ってる人から見ればパンパンに見えるようで、「スゲェなそれ・・・」という感じだった。
お見舞いに来てくださったみなさん、本当にありがとうございましたm(_ _)m
退院を前に今夜は病院で過ごす最後の夜。
談話室では、おじいちゃんたちが集まり、WBCを見て盛り上がっている。
俺は最後の抗生物質の点滴を終え、明日の退院にそなえて少し身の回りを片付けてから就寝した。
3月8日、入院6日目にして病院生活最後の朝を迎えた。
退院は歯科の診察を終えた後、午前中にはできるらしい。
さて、病院食のラストを飾る朝ごはんはなにかな?
お、味噌汁じゃなくて・・・これはコーンスープだ!珍しいな。
それと、あとはお粥か。
・・・ん?これ本当にお粥か?
お粥にしては見た目の水分が少ないな。
なんだろうと思い、スプーンを入れてみると、明らかにお粥よりネチネチしてる。
一口食べてみると、それはまさにパンをすり潰したものであった。
でも、これがマズイ(笑)甘くてネチネチしてるお粥みたいで、二口食べてフタをしてしまった。後で献立表を見たら、今日の常食のメニューはロールパンだった。
あーあれはキツイ。
入院最後の食事は実に微妙だった。
9時過ぎ、今日は退院日のため、早めに歯科の診療を受ける。
傷口の程度も良好、経過も良いとのこと。
左アゴと唇に残ってしまった痺れは、今後長期的に治療するとのことなので、まだまだ通院生活は終われないが、ひとまずこれで山場は越えたと言ってもいいだろう。
次の来院は手術から1週間後の3月11日。
口の中を複雑に縫い合わせている糸を抜く、抜糸のときだ。
病室に戻り、荷物をまとめていると隣のMさんが、「よかったですね!」と声をかけてくれた。Mさんは術後の経過観察がもう少し必要なため、まだ退院できず、俺のほうが先に病室を後にすることとなった。
3日に、「お互いがんばりましょう」と声をかけあった二人だったが、この日はお互いに「お大事に!」と声をかけあった。
そのうち、会計処理も終わり、看護師さんから退院していいと言われた。
同室のみなさんに軽く挨拶をした後、6日間お世話になった病室の一角に別れを告げた。
ひさびさにちゃんとした服装、ちゃんとした靴で歩く病院の廊下は、実に新鮮だった。
最終章 退院後の生活
短い入院生活だったが、やはり自分の家で自分のやりたいように過ごせる時間は、本当にいいな~と思った。
退院後、いちばん気にかかったのが食事。当然、退院後もまともな食事はできなかったので、スーパーでレトルトのお粥、野菜ジュース、バナナ、ゼリー飲料などを買い込んで帰宅。
バナナを食べるのは若干大変。なんせ口が開かないので、半分に切ってから食べるなどの処置をしないと口の周りがグチャグチャになる(笑)
今開く口の大きさを測ってみたところ、上の歯と下の歯の隙間が全開で1.5センチ!1.5センチより厚みのあるものは口の中に入れることが不可能なのだ。
あと、傷口を縫合している糸が、頬や上あごにも通っているため、無理に口を開けようとすると突っ張って痛い。
とりあえずまともな食生活は抜糸後まで待つしかないだろう。
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3月10日現在、顔の腫れは元の輪郭がわかるくらいまでひいてきました。
ただ、口の中の腫れがなかなかひかず、そこを歯で噛んで口内炎ができてしまい、痛いです。
食べ物を噛む力はちょっと復活してきたので、後は口が開くようになれば、と思います。今日の昼はペヤングソース焼きそばを食べて、ひさびさに濃い味のものを食べました(笑)
長くなりましたが、これにて『親知らずとの戦い -入院・手術編-』を終わりたいと思います。前後編共に読んでくださった方、ありがとうございました。
僕と親知らずとの戦いは、まだもう少し続きます。
まぁ、正確には「親知らずの残した爪痕との戦い」になりますけどね(笑)
明日、抜糸に行ってきます!