8月28日、朝7時。
起きる時間はキャンプ生活となんら変わりはないけど、やはりフトンで寝るほうがぐっすり眠れるというか、起きたときの「よく寝た感」が違う。
そして今日はテントの撤収やら片づけやらをしなくていいのがなにより気楽。
さて、気になる今日の天気は・・・?
カーテンを開けて、外の景色を見た。
するとどうしたことか!
なんと晴れている。昨日の天気予報で見た朝から雨という予報は、見事ハズレたのだった。上原を起こし、晴れていることを告げると、お互いテンションがあがった。
これで今日の予定は決まった。
知床観光船はまたの機会にし、ツーリングを予定通り進めることに。
朝ごはんを食べ、早速出発の準備を整える。
しかしテレビの天気予報を見ると、今日もやはり下り坂の空模様らしい。
しかし、青空からサンサンと降り注ぐ太陽の暖かい光を受けると、とても今日はそんな気がしなかった。
もしかしたら今日は再び訪れたツーリング日和なんじゃないか?
少しワクワクしながら、バイクに荷物を積み込んだ。
一晩お世話になった桂田さんにお礼を言い、バイクのエンジンをかける。
「今日は天気大丈夫そうですね。でも、峠(知床峠)晴れてるかなぁ・・・?この先もお気をつけて!」
フロントのおじさんがそう言って見送ってくれた。
峠、晴れてるかなぁ・・・?
のセリフに若干ひっかかりを覚えたが、なんせこんないい天気。きっと晴れてるさ。
そうして俺と上原は6日目のツーリングを開始。
今日の予定は、知床峠→開陽台→根室(花咲)というコース。
根室の花咲港まで行く理由は、今が旬の「花咲ガニ」を買いに行くためである。
走ること10分。R334はいよいよ知床峠に向かって登り始める。海を見下ろす。空気もヒンヤリしていて走っていてとても気持ちのいい道だった。
道の脇ではシカがまったりと草を食べていました。残念ながら牡鹿はいないみたい。この辺のシカは奈良で見たシカと違ってだいぶ大きくてたくましい感じがした。
だんだんと高度をあげていくと、標高1661mの羅臼岳が目の前に。それにしても、なんかこの先ひくーい雲が立ち込めてるような・・・。
なんか嫌な予感がするんだけど・・・。
まさかここで見た青空が、本日ラストの青空になるとは、このときの2人は想像もしなかった・・・。
R334をもう少しのぼっていくと、間違いなく例の低い雲に向かっていることが確定。そしてほんの数分前までとは、180度違った視界が広がる。
お先真っ白!!
全然キリで視界がきかないので低速走行を余儀なくされた。なるほど、宿舎のおじさんが言っていた意味がようやく理解できた。知床峠恐るべし。
こんな視界だから、峠をいつのまにかスルーしてたらしく、かなり消化不良な峠越えになってしまった。
なかなかの霧雨に、たまらずカッパを着る。
今日もいきなりカッパかよ・・・。さっきの青空でおもいっきり期待させられて、数分後にこれだとけっこう凹む。
きっと峠を越えて羅臼側に出れば、また晴れてるさ。
そう信じて知床峠を羅臼側へ下っていった。
しばらく下ると、キリは晴れたものの、今度は普通に小雨が舞う天気に。
峠越え前との正反対の天気のギャップにショックを受ける2人。
やはり、あの晴天の中、知床観光船に乗っておくべきだった・・・。気づいたときにはすでに遅し!羅臼側は完全に低い雲が立ち込め、雨は降ったりやんだりを繰り返す。
道の駅、知床・らうすで休憩。さっきまでの青空がウソみたいな灰色の空。でも今はなんとか曇りでもっている感じ。このままいってくれればよいのだけど・・・。
この道の駅で、ぶどうエビという1尾800円もする高級なエビを食べつつ、店のおばちゃんと話をした。どうやら、ウトロ側と羅臼側での天気の豹変はいつものことらしく、最近は毎日天気が悪いとのこと。
そしてぶどうエビは、例えるならデッカイ甘海老といってところだ。
そしてここには、今日根室まで行って買おうと思っている花咲ガニも売っていた。2ハイで4000円となかなかなお値段。
今日花咲港まで行って買うという旨を伝えると、「あっちは高いよ~」というセールストークをかまされた。しかし花咲港で獲れるものが、この羅臼より高いわけないだろうと思い、当然ここでは買わなかった。
トイレをすませ、今度は開陽台に向かってR335を走る。
さっきまで曇り空だった空から再び雨が降り注ぐ。昨日ほど大粒の雨ではないけど。シトシト降り続きそうなイヤーな雨。
結局今日もこうなったか・・・。
憂鬱感全開で開陽台に向かう。果たしてこんな天気で開陽台に行く意味はあるのだろうか・・・。自分自身にギモンを投げかけつつも、やっぱり向かう先は開陽台。
ツーリングマップルでオススメルートになっている、開陽台へ向かう「北十九号」。地平線に向かって延びる素晴らしく開放的な道として有名だ。
その開放的な道を雨が降り視界が悪い中走る。
単調なまっすぐ道。そして雨。景色は真っ白。
とてつもなくつまらん・・・むしろ苦痛を伴う。
俺 「あぁぁぁ~つまんねぇぇぇぇぇ!!」
上原 「もう帰りてぇぇ!」
途中で停まり、たまらず不満をぶちまける2人。
2人の叫びは、この広大で静かな北十九号周辺にむなしく消えていった。
不満をぶちまけたからと言って、晴れるわけでもない。あきらめて再び走り出す。
こういうとき、ドラゴンボールに出てくるサイヤ人とかを召還して、気合で雲をすべて吹っ飛ばしてくれないかなぁ・・・なんて思う。幾度となく、思う。
もはや試練ともいえる真っ直ぐな北十九号をしばらく進むと、目的地の開陽台展望台に到着した。駐車場には2,3台バイクが停まっていてちょっとホッとした。
地球が丸く見える開陽台。
丸くは見えませんでしたが、白くは見えました。
この開陽台には、最近オープンしたと思われるオシャレなカフェがあったので、ここで休憩&軽食をとることに。
上原が注文したジャンボおにぎり。
対象物がないのでわかりにくいかもだけど、ほんとにジャンボだった。茶碗1.5杯分は普通にありそうなボリューム。
ここで飲んだホットチョコレートがおいしかった。
軽食後、今後の北海道ツーリングでの幸せを願って、「幸せの鐘」を鳴らす2人。
真っ白な開陽台に、カーンカーンという大きな鐘の音が響いた。
開陽台、きっと晴天で来たら素晴らしい展望なんだろうな。
またきっとリベンジしてやるぞ!
そう誓って、開陽台を後にした。
その後、道道150号→69号→8号で別海町方面へ。
この道道8号を走行中、昨日以上の大雨に遭う。
走っている途中、自分が今何をしているのか、なんでこんな雨の中走ってるのかよくわからなくなった。というか、「北海道へツーリングを楽しみにきている」ということすら忘れるくらい。
途中で地図を確認すると、やっぱりここは北海道だよなと再認識する。
雨の中地図を見ると、たちまち新品のツーリングマップルはグッショリ。
タンクバッグに濡れて千切れたマップのカスがたまった。
別海町を過ぎ、R44で根室半島へ向かう頃には雨もだいぶ小降りになり、少し安心する。しかしこの根室に向かうR44もまた、退屈な国道。花咲ガニを買うという目標の元、がんばって花咲へ向かった。
そして3時をまわった頃、周りが港らしくなってきて、磯の香りが漂う花咲港に到着。早速花咲ガニをGETするため、目的の某水産店を探す。
花咲港からほど近い一角に、目的の水産店を発見!道の脇にバイクを停めさせてもらい、早速店内へ入る。
店頭に並んだ花咲ガニはなんと1尾800円!
安い!
1尾2000円する羅臼の道の駅で買わなくて正解だった。
どれがいいかなぁ、と選んでいると、中から元気のいいおばちゃんが登場!
「いらっしゃーい!!
ごはん食べてくかい?」
といきなり聞かれ、とりあえず「はい!」と即答する。
ふと、店内の掲示物に目をやると、
【カニお買い上げの方、ごはんサービス!】とデカデカと張り出してあった。なるほど、これが「ごはん」か!
「中入っておいでぇ~」と店内に招かれる俺と上原。
店内に入ると、テーブルとイスが用意されていて、漁師さん2人がすでにお酒を片手にいい気分になっていた。
「にいちゃんたちどっからきたの~?」と若干のナマリで問いかけられ、料理が出てくるまでの間。その漁師さんたちと会話を交わす。聞けばお二人とも根室の人ではなく、一人は仙台から、一人は釧路から、サンマ漁にきているとのこと。
ほどなくして、おばちゃんが「はいよー」と、デッカくて実のギッシリ詰まったゆでとうきびを持ってきてくれた。お、これが
「ごはん」か。と早速いただく。
これがまたすごい甘くておいしかった。
しかし、本当の
「ごはん」はこれからだった。
「ハイ、おまたせー!」
と持ってきてくれた、これが本当の
「ごはん」だった。
「ごはん何杯でもおかわりしなね~!」
と、言われ、量に圧倒される俺と上原。
もはやサービスという量ではない。定食だ。
いろいろな魚介類の小鉢、カニ汁、そして新鮮な生サンマとサンマの塩焼き。俺は魚をきれいに食べるのが下手くそなのだが、このサンマは本当に骨までやわらかく、珍しくきれいに食べることができた。
ごはんをいただきながら、上原と今後のルートについて検討する。なんせ今日どこに宿泊するのかも決めていないので、地図をみながら本日の宿泊地を決める。明日帯広周辺まで行くことを考えれば、少しでも西へ向かった方がよさそう。
しかし時刻はもう4時。
外はまた大粒の雨が降り出し、とてもキャンプできそうな状態ではない。
どこへ泊まろうか、どうしようか・・・。と悩んでいると、
「もし先を急がないんだったら、泊まっていきなよ!お風呂はないけど、トイレはあるから不便はしないと思うよ~。雨風もしのげるしさ!」
と、おばちゃんから耳を疑うようなセリフが。
最初は冗談かと思ったら、どうやら本気で言ってくれているみたいだ。
どうしようか悩んだが、この雨の中またバイクで走り出すのも・・・と思ったので、ここはご好意をありがたく頂戴して、今日はこの水産店様に泊めて頂くことに。
そうと決まれば荷物をバイクから降ろす。
そしていつも休憩場所として使っているような感じの離れの建物へ案内された。
これまた想像以上に立派なお部屋。トイレ、テレビ、水場もあり、まさにパーフェクトな場所。
もちろん寝具はないけれど、シュラフがあるので全く問題なし!
お店の人のご好意に思わず感動する俺と上原。
今日、ここまで雨の中走ってきた甲斐があった。人の温かさに触れることができた今日は、それだけで意義のある一日となった。
外は大雨。さっき別海町で食らった雨が根室まで流れてきたようだ。この中、走り続けることにならなくて本当によかった。
改めて泊めて頂けることに感謝。
部屋の床に新聞紙をひいて、濡れたも物の水分を吸収させる。
雨でグショグショになったツーリングマップルも乾燥させなきゃ。
テレビを付け、どさんこワイドにて気になる明日以降の天気をチェック。
果たして明日向かう、帯広は大丈夫なのか?
どうやら天気回復という願いは、天に届かなかったようだ。
明日もキツイ一日になりそう。
皮肉にも北海道を離れた後の31日以降、回復するようだった。
その後もテレビを見てクスクス笑いながら、ゴロゴロと時間を過ごす。
それにしても部屋の中に荷物散らかしすぎ(笑)
北海道ツーリング、残すところあと2日なったけど、明日もまたこんな天気かと思うとウンザリ・・・。さすがの雨男t-matsukiですら、こんな連日雨に降られるハメになるのは初めて。記録更新だ。
しかしそんな中でも、何か楽しみを見つけなければならない。
今朝、知床で見たような青空を、北海道にいる間にもう一度見たい。
部屋の外壁に雨が横殴りに当たる、コツコツという音を聞きながら、今日は風呂にも入らず10時に消灯となった。
続く...
【本日の走行距離】
194km
【本日の天候】
晴れ後
雨
【本日の走行ルート】