前回は静浜基地航空祭での、ブルーインパルスによる見事な曲技飛行をご覧いただきましたが、今回はその後帰るまでの出来事です。
午後2時半、ブルーインパルスの曲技飛行が終わり静浜基地を後に。
そして温泉に入って帰ろうということで、少し山間に入ったところにある、「瀬戸谷温泉ゆらく」へ。
けっこう新しめの温泉施設だったけど、そこまで広いわけでもなく、さすがに日曜日ということもあり、洗い場は満席で順番待ち。露天風呂もこれまた満員でひしめきあうような状態。
なんかあんまりゆったりできなかったけど、とりあえずさっぱりしたからいいか。
その後東名に乗り、焼津から清水まで移動。
清水ICから由比に向かい、この辺の名物、桜えび定食を食べる。
以前、寸又峡ツーリングに行ったときもこの桜えび定食を食べた。
生の桜えびなんて食べる機会があんまりないので、以前と同じようなものを食べても新鮮な感じだった。かき揚げもサクサクで非常においしかった。
さて、夕食をすますと、すでに時刻は7時半。
そろそろ帰路につかないといい加減遅くなってしまうので、東名の富士ICを目指し走り出す。高速に乗る前に給油をするため、富士IC手前のセルフスタンドへ入った。
そしてこのセルフスタンドこそが、俺のトラブルの舞台になったのである。
給油機の隣にバイクをつけ、液晶にタッチ。
クレジットカード払い、ハイオク満タンに触れる。
ビープ音が鳴り、「静電気除去シートに触れ、給油を開始してください」とのアナウンスが給油機から発され、左手でハイオクの黄色いノズルを手に取り、右手でバイクの給油キャップのカギを開けようとした。
・・・・しかし・・・・。
キーを右に回せば、パコンッと開くはずのキャップが・・・開かない。
「あれ??」
ハテナマークのまま、もう一回キーを右に回す。
しかしカギは若干回るものの、いつもの「パコンッ」と開くところまで回らない。
時計でいうと、12時~1時の間の範囲くらいくらいしかキーが動かないのである。
「まじかよ・・・、なに・・・コレ?」
若干焦り始めた俺は、一旦左手に持った給油ノズルを戻し、本腰を入れて再トライ。結果は同じ。少ししか回らず。
「もしかしたらキャップがひっかかって開きにくくなってるのかも・・・」
と読んで、キャップを押しながらキーを右へ回した。
しかしそれでも開かない。
この時点で俺は今起こっている状況の重大さに気づき始めたのである。
タンク内に残ったガソリン、4リットル。
残った4リットルのガソリンで走れる距離、約60km。
現在地から千葉の自宅までのキョリ、200km。
イコール、
このままでは帰れない・・・。
まだ状況を知らない、他の3人のメンバーに、
「緊急事態宣言」 を告げる。
「すいませ~ん、ちょっとありえないコトがおきてるんですけど・・・」
若干弱った声でそう告げると、他の3人がどうしたどうしたと集まってきた。
状況を話すと、他のメンバーもキャップを開けようと挑戦するのだが、まったく開かない。そういえばここ最近、若干カギ穴の動きが渋かった気がする。
もしかして油をさせばいいのでは?と考えた。
幸いここはガソリンスタンド。KURE5-56ぐらい置いてるだろう。
スタンドのおじさんに声をかける。
すると奥から望みどおりのKURE5-56を持ってきてくれた。
早速鍵穴に噴射。
しばらく浸透させるため、待つ。
そして回す!
回らない!!
「量が足りないんじゃない?」
ってことで、もう一噴射。
浸透!→回す→回らない!!!
ここで俺がひとつ提案。
「よし、タンクキャップを固定してるボルトをはずして、タンクキャップアッセンブリーごとはずしてしまおう」
おじさんにアーレンレンチがあるかどうか尋ねると、奥から持ってきてくれた。
必死にアーレンでキャップのボルトをリムーブする。
しかし、ここで俺は焦るあまりに、ある重大なコトを忘れていることに気づいていなかった。
タンクキャップのボルトは外れた。
まわりのリングは外れるが、そもそもカギがあいてないので、キャップ自体がとれるわけないのである。これでキャップがとれたら、ハッキリ言ってカギの意味などない・・・。
通常の神経なら普通気づきそうなことも、このパニック下では全く気づかなかったという恐ろしい事例である。というか俺アホすぎ。
はずしたボルトをもう一度締めなおす。
しばし途方に暮れる。
エンジンはかかる。バイクの性能、機能にはには全く問題はない。しかし!
ガソリン入れられないという超直接的な要因で、足止めを食らうむなしさといったら・・・。
ここまで来たら俺はもうロードサービスを呼ぶしかないと思った。
しかしメンバーの一人が、
「これでロードサービス呼んでも、どうせカギ壊されて終わりだぜ~」と言った。
まぁ、確かに。開かない鍵を開ける方法といったら、あとはこのキャップをブッ壊すほかない。それをやるとタンクキャップごと交換になって、メインキーとキャップキーが別々になるというめんどくさいことになってしまう。
「よし、最後に(KURE5-56を)全開噴射しようぜ」
ということで鍵穴だけでなく、タンクキャップ全体に惜しげもなくKURE5-56を噴射する。全開で噴射する。タンクキャップ全体がヌルヌルになり、KURE5-56のニオイが充満する。
これだけ噴射すれば、おそらくガソリンの中にKURE5-56が混じったことだろう。
でも、今はそんなことどうでもよい。
とりあえずあいてくれないと困る。
そして最終トライ!
俺は鍵を右へ回した。
全く変化なし!!
だめだ。打つ手はすべて尽くした。(油差しただけだけど)
とりあえず状況は変わらないかもだけど、最終手段のロードサービスを手配するため、ケータイを手に取る俺。
電話しようとした矢先、メンバーの一人が、
「ちょっとここだと邪魔になるから、端っこにバイク寄せようぜ」
と言った。
しかし、この何気ない一言が、救済の一言となる。
一旦電話をポケットにしまった俺は、バイクのエンジンをかけ乗って移動。そしてエンジンを停止。
キーを抜いた後、何気なく開くはずもないタンクキャップにキーを挿し、さっきのように右へ回した。
ぱこんっ
・・・。
・・・・!!!
・・・あ!?
あ、あいたぁ!!あいたぞぉぉっぉっぉぉぉ!!!!!!!
歓喜の声をあげる俺。
他の3人が寄ってきて、「なんでだ?なんでだ?」と状況を見る。
どうやらさっき移動する前にエンジンをかけたことによって、タンク内が負圧になって、大量噴射したKURE5-56がシブイ可動部に浸透して、うまく潤滑したのでは?という話になった。
うーむ、確かにそうかもしれん。
歓喜の興奮冷めやらぬまま、給油を行う俺。
今までこんな充実感のある給油を行ったことがあっただろうか。
無事満タンになり、自宅へ戻ることができましたとさ。
いや~メンバーのみなさん、ご迷惑をおかけいたしましたm(_ _)m
これからはKURE5-56を常備アイテムとしたいと思います。(笑)
自宅についたのは午前12時40分!
走行距離は588km。
お疲れ様でした!